2018年07月24日
補聴器がQOLをあげた事例 「きこえの保障」
下の表は「難聴」「おそらく難聴である」
と回答した人の、年齢別の割合です。
(2012年 日本補聴器工業会による調査 ”ジャパントラック2012”)
きこえづらさを感じている人を年齢別で見た場合、
75歳以上の回答者では43.7%の人が
「難聴」「おそらく難聴である」と答えています。
多くのご年配の方が「きこえの不自由」を感じています。
しかしながら日本国内の補聴器使用率は
ヨーロッパなど海外に比べ非常に低く
補聴器は高額、小さくて取扱いが難しい、うるさい、
つけても言葉がハッキリしないなどマイナスの印象を
持たれていることが考えられます。
高齢者の介護現場では破損や紛失への懸念から
サービス提供者側が補聴器の使用に積極的になれない現状も
あるのではないでしょうか。
もちろん補聴器は万能ではなく、
使用者の聴力や難聴の原因によっては
期待する効果が得られない可能性もあります。
しかし、聴力の低下が起きやすい高齢期の方々に対する
補聴器による「きこえの保障」は自立生活支援にとって重要です。
施設など介護現場における「きこえの保障」は
利用者とのコミュニケーションを充実させ、
利用者の意志や意欲を把握でき
個人の尊厳を守ることに繋がります。
ご年配の方々の「きこえ」の理解には、難聴に関する知識、
高齢者心理、補聴器に関する機能や特性も大切ですが、
きこえることで本人様にどのような変化が起きるのか、
実際に補聴器の使用が
QOL(Quality Of Life =生活の質)をあげた事例をぜひご覧ください。
(公益財団法人テクノエイド協会 パンフレット抜粋)
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事例① Aさん
・女性
・92歳
・要介護3
認知症と診断され、長女と同居して介護を受けている。
下肢筋力は低下しているものの、杖なしでゆっくり歩行できる。
もともと補聴器を使用していたが、
調子が悪く、外したままの状態が続いていた。
きこえないのでデイサービスでは会話に加われず、
話すこともその場には合わない内容になっていた。
長女と2人暮らしなので、家では特に支障もなく過ごしていた。
長女は
「認知症もあるので、補聴器を作り直しても意味がないのでは」
と考えていたが、デイサービスでの様子を聞いて作り直したところ、
家族の会話にも加われるようになった。
デイサービスでも他の利用者と会話がかみあい、
若いころには満州にいたこと、
市川雷蔵が大好きだったことなどを話し活発になった。
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事例② Bさん
・女性
・89歳
・要介護2
大腿骨骨折の既往があり、歩行は杖を使いゆっくりと歩く。
重度ではないが認知症があると診断されている。
デイサービスを利用していたが、ある時ショートステイを利用し、
そこでポケットに入っていた補聴器を洗濯されていしまい
壊れて使えなくなってしまった。
その後デイサービスに通っていたが周りと話ができず、
職員の言うこともきこえないため、
認知症が進行したかと思えるほどまったく自分勝手な動きをし、
今まで出来ていたことができなくなった。
紙に書いて伝えようとしたが、あまり効果はなかった。
家では同居している息子夫婦と折り合いが悪く
常日頃から会話が無いため、
本人はあまり支障を感じていないようだった。
デイサービスから家族に様子を伝え、
補聴器を作り直してもらったところ
以前のように他利用者と一緒に活動に加われるようになった。
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事例③ Cさん
・女性
・83歳
Cさんは2次予防の高齢者ですべて自立している。
趣味でフラワーアレンジメントを習っているが、
最近まったくきこえなくなり習い事を辞めたいと言い出す。
先生の言うことが聞こえず、
フラワーアレンジメントもどうすれば良いのか分からなくなったという。
そのうえ、一緒に習っている人たちの会話に加われず
、
取り残されたような気持ちになるようだ。
家では夫と二人暮らしなので、
特にきこえなくても不自由はないという。
遠方にいる家族が「補聴器を作った方がよい」と勧め、
Cさんは補聴器を使い始めた。
暗い気持ちになっていたCさんだったが、
よくきこえるのでフラワーアレンジメントが楽しいし、
また元のように一緒に習っている人たちと会話が出来ると
明るくなった。
きこえないことが心理的に影響し意欲を削いだり、
精神活動が不活発になると思われる。
目で見えるものだけでは情報が不十分で、
きこえるということが高齢者にはとても重要であると考えられる。
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